コラム 人は我が儘だ
by うんちく一番
自然渓流での釣りをしていると「人はなんて我が儘なのか」と感じることがあります。これは、リザーバー（ダム湖）や自然湖沼、管理釣り場の釣りでは感じなかったことです。結局は、利害だったり欲だったりが絡むわけですが、本来、人がもっているものとはいえ、あまりに「なんだかなぁ」と感じずにはいられません。
その１ 無駄な砂防ダム
メンバー各位が釣行するフィールドである「谷太郎川」「秘密の川」「クリークⅠ」の全てで「砂防ダム（堰堤）」を目にします。その数も１つや２つではありません。わずか数百メートルに１つ、否、１００メートルにも満たない間に次の砂防ダムが現れたりします。
砂防ダムはご承知の通り上流から流れてくる砂礫をくい止め、谷の浸食を防ぐという大義名分があります。しかし、現在、我々が目にする全ての砂防ダムは、砂礫に埋め尽くされ全く機能していません。こうして埋まってしまった砂防ダムは、水面の上昇を招き、結果として元の水面より遙かに上の山肌を浸食することになります。お役人の論理からすれば、また新たに砂防ダムを造ればいいのだと言いそうです。しかし、そうやって次から次へと砂防ダムを造れば、川は砂防ダムだらけになってしまいます。
その上、砂防ダムは、その建設工程で川を一時的に堰き止めたり、建設車両のために川の渓相を変えたりと自然破壊も甚だしいわけです。更に、砂防ダムができることで、魚の往来は砂防ダムと砂防ダムの間に限定されてしまうという弊害も生じます。
もっと大きなダムになれば、そうした自然への影響は甚大です。ダムが必要なのは判ります。しかし、先日キャンプを行った道志ダム下流の道志川が、まるで近所の川か？と思えるような死んだような藻に水中の石が覆われているのも見ると、果たしてそれで良いのかと考えさせられます。
砂防ダムについては、フライフィッシャーという雑誌に集中して連載されていますので、興味ある方はご覧ください。
その２ 日本全国管理釣り場
今や放流事業なしに釣りという遊びが成り立つ河川、湖沼は皆無といっていいでしょう。鮎しかり、へらブナしかり、山女魚しかりです。ブラックバスでさえ、山中湖、河口湖では放流なしには、釣りが成り立ちません。そうして放流された魚を釣り上げて楽しんでいるわけです。これでは、管理釣り場と形として何ら変わりません。
違いがあるとすればコストです。管理釣り場は一日遊んで4000円程度。対して自然河川は一日1000円程度。年間入漁券なら1万円程度で圧倒的に安価です。管理釣り場であれば、常に一定量の魚が供給されます。しかし、自然河川となると、様々な事情からそうはいきません。しかし人は現金なもので、すっかり釣りきってしまっておきながら「魚がいない」と怒る始末です。
谷太郎川では、解禁当初には、駐車場を確保するのが難しい程沢山の釣り人がいました。今は殆ど見かけません。ということは、大半の釣り人は放流魚が目当てで、すっかり釣りきってしまい、魚影が薄くなったため、釣りに来なくなったということなのでしょうか。放流魚を釣る行為は、管理釣り場のそれと全く変わりません。安価な管理釣り場と考えれば、それもありなのかもしれません。また、ヒレの丸い放流魚を食べるなら、養殖業者から直接買った方がお手軽だとも思います。
（追記） 漁師（見習）さんの「釣り人が減った事」についてのご意見を追記（掲示板からの転載）しておきます。
『・・・１０月あたりにたいていの川は禁漁に入るわけですが、釣り人たちはそれから約半年間鱒インフルエンザを悪化させながら解禁を待つわけですよね、そやぁもう解禁と同時にストレス発散ですよ、それからしばらくして落ち着くのはどこの川でも一緒ですよね、谷太郎川について言えば解禁当初人が多かったとはいっても他の有名な川に比べたらガラガラもいいとこです
笑。釣りきっていなくなったというよりは、禁断症状が落ち着いた、他の川にもいってみたくなった、そうそう釣りばかりしていられない。。といったとこのような気がします、放流は続けてるわけですし「すれる」ことはあっても「釣りきる」なんてことが可能だとは思えませんし、真夏はもっと人いないんじゃないですかね、つれないし
笑。・・・』
ルアーやフライなら、禁漁中は管理釣り場にいって鬱憤を紛らわすことができますが、餌釣りの場合、そうもいきません。余計に鱒インフルエンザの悪化もひどく、解禁直後に集中して治療することで、治癒も早いのでしょう。
その３ キャッチアンドリリース
これは書き出すと、大変長くなるので簡単にまとめます。キャッチアンドリリースか、キャッチアンドイートかを突き詰めていくと、結局、釣り人の我が儘であり屁理屈ではないかと思います。「何度も釣りたい」からリリースするも、「食べたいから持ち帰る」も理由は全て屁理屈であり、単なる我が儘です。屁理屈を突き詰めていくと、死生観とか宗教観という袋小路に迷い込んでしまいそうです。極論言えば、自然を残したいなら釣りをしないで、人がその川に入らないようにするのが一番でしょう。食べるだけなら養魚場で買ってきたって同じです。ヒレピンの魚が・・・と言い出すから養魚場のヒレの丸い魚じゃだめで自然産卵したネイティブが・・・となるのではないでしょうか。まあ、確かに、ヒレの丸い魚より、貴重なヒレピンを釣った方が自己満足度も高いでしょうし、食べてもおいしいのは判りますけどね。
まとめ
最後に、人は我が儘で、例えば、電力の安定供給は必要だが、自分の近くに原子力発電所が建設されるとなると猛反対し、ゴミ処理場は必要だといいつつも、やはり自分の近くにはない方がよいと思うようです。暮らしが便利になったり、勝てるはずのない自然の摂理にコンクリートの固まりで立ち向かう一方で、自然破壊を声高に叫ぶ。あまりに両極端です。何事も程々がよいのでしょうが、その程々が難しい訳です。
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